《要請趣旨》
2月29日に国家公務員の賃金を2年間にわたって平均7.8%引き下げる「臨時特例法」が成立し、国家公務員の労働基本権の回復がないまま、一方的な大幅賃下げが行われました。さらに政府は、5月11日の閣僚懇談会で、独立行政法人・国立大学法人等にも国家公務員と同様の賃金削減を求めることを申し合わせ、国立病院や労災病院等の医療機関についても賃下げの対象としています。東日本大震災で、医療労働者は、自ら被災しながらも不眠不休で医療を守り、全国の医療機関からは多数の医師・看護師等が医療支援に駆けつけました。東北地方は、震災前から医療過疎が問題となっていた地域であり、公的医療機関への賃下げ強要は、医師・看護師等人材確保をますます困難にし、被災地の医療再生や復興にも逆行するものです。
また、そもそも独立行政法人等の職員の賃金決定は、自主的・自立的な労使関係の中で決定するものとされており、政府による賃下げの強要は、労使自治に対する不当な介入であり、憲法で保障された基本的人権を侵害する暴挙といわざるを得ません。
いま、全国各地で「医療難民」、「介護難民」が社会問題化し、医療・福祉分野の人材確保が喫緊の課題となっています。国立病院、大学病院等においても医師・看護師等の不足は深刻であり、大幅賃下げが強行されるならば、人材確保が困難になり、医療機能の維持ができなくなることも危惧されます。独立行政法人・大学法人等は、救急医療、周産期医療、災害医療、結核・感染症、重症心身障害・筋ジストロフィー、精神医療など等様々な医療を担っており、医療機能の後退は、地域医療・国民医療に深刻な影響をもたらします。くわえて、独法・大学法人等の大幅賃下げは、民間の医療・福祉労働者の賃金や地域経済に対しても大きな影響を及ぼします。そもそも、医療・福祉労働者の賃金は、過酷な労働実態や専門性・責任の重さにみあった水準にはなっておらず、抜本的な改善こそ必要です。医師や看護師等がやりがいをもって働き続けられる労働環境の整備は、国民が願う安全安心の医療提供体制をつくるためにも重要です。被災地の一日も早い医療再生、医師・看護師等の人材確保と安全安心の医療体制の確立のため、次の事項を要請します。