労働時間が12時間以上で過誤の発生率が3倍に
この結果を受けて以下の勧告が出されました。
「州政府は、エラーの原因となる疲労を減らすために、看護スタッフが患者ケアを提供する時間を、指示による残業、自発的な残業を含め、交替勤務のどのような組み合わせであっても、1日12時間、また一週間60時間以上になることを禁止するべきである」
13時間連続夜勤で泥酔状態同様に
1997年にオーストラリア大学・ドーソン博士らが、眠気を、血中アルコール濃度に換算して評価する「アルコール中毒法」で調査した結果
夜勤開始後13時間(午前3時)の眠気⇒血中アルコール濃度0.05%と同じ
夜勤開始後18時間(午前8時)の眠気⇒血中アルコール濃度0.1%と同じ
血中アルコール濃度0.05%は酒気帯び運転と同じ濃度であり、日本の酒気帯び運転の血中アルコール濃度は0.03%だそうです。つまり、すでに午前3時の段階で、酩酊状態で夜勤ということになります。これでは、リスクが高くなるのも当然です。
個人だけでなくチームの安全チェック機能が低下する
インシデントや医療事故の生じるメカニズムは、最近の研究(2006年、ドリアン、ラモンド他)においては、インシデントを生じさせた看護師本人の眠気や疲労以上に、同僚看護師の眠気や疲労状態に陥ることによって、インシデントの発見能力が落ちてしまうことこそ問題があると報告されています。安全はスタッフみんなで守るもの。長時間夜勤のリスクは、個人だけでなくスタッフ相互のチェック能力の低下にあるとの指摘は、まさにその通りです。
勤務後の自動車帰宅もより危なくなる
夜勤の安全性に有害な眠気や疲労は、ストレスがかかっている勤務中よりもむしろ、ストレスから解放される勤務後に姿を現します。夜勤後の通勤途中の自動車事故やニアミスの訴え、眠気を感じたという訴えのどちらも、8.5時間以下の夜勤看護師より明らかに高いとの調査結果が報告されています(右表参照)。12.5時間でこれですから、16時間勤務では自動車通勤事故の危険度がもっと増すのは明らかではないでしょうか。