5月15日、連合会がいったん引っ込めた給与改定案をまた出してきました。4月交渉で公務員特例法7.8%賃下げについての議論があれだけ紛糾した給与改定問題ですが、なぜいまごろになって人勧0.23%賃下げ提案をしてきたのでしょうか? 経過と内容を確認します。
給与改定問題交渉の経過
3月12日 人勧の平均0.23%賃下げ・不利益遡及あり・4月1日実施を提案される。
3月23日 4月1日実施の延期と、次回交渉で特例法7.8%賃下げについて協議したいと伝えられる。
4月9日 春闘交渉で7.8%賃下げについて激しい議論をする。
5月15日 人勧の平均0.23%賃下げ・不利益遡及あり・6月1日実施を提案される。(実施時期変更)
提案では、6月から毎月の給与が平均0.23%下がります。ただし、給与の低い若年層からは引かずに、おおむね在職20年以上のベテランが賃下げの対象です。賃下げはいやですが、それほど大きな金額ではないと言えるでしょう。ところが、連合会はこの賃下げを昨年2011年4月に遡ってするために、夏の一時金から「調整」して引くというのです。すでに受け取った給料を返すなんてとんでもない! こんなことがまかり通ったら、私たちの生活は不安定なものになってしまいます。
法律には「不利益不遡及の原則」があり、新たに制定されたり、法律が改正されたりした時、その施行以前に遡って適用されないという原則があります。一時金から引くことを「調整措置」と言い換えたところで、すでに支給した給与をあとから減額するのは「不利益遡及」です。法律違反は絶対に認められません。
なお、人勧0.23%賃下げは、国立、日赤、公立学校共済など他の全国的な病院ではすでに実施されており(国立は不利益遡及あり、日赤、公立学校は不利益遡及なし)、連合会もそれにならったとみることができます。
7.8%賃下げの可能性は消えていない?
連合会が0.23%賃下げを提案したからといって、公務員特例法の7.8%賃下げの可能性が消えたとはいえない状況です。報道によると、政府は独法や国立大など国の公的機関の人件費についても、国家公務員と同じ平均7.8%減額して、震災復興財源に充てる方針を出しました(日経2012年5月11日)。「政府は各法人の労使交渉の結果、給与の引き下げに応じない法人があった場合でも、補助金のカットを強行する方針だ」とありますが、連合会病院に国から補助金は出ていません。そもそも労使自治に国が介入するのはおかしなことです。さらに、「国の支出を受けていない公的機関にも、給与の引き下げを求める」とはまったく理解に苦しみます。もらってないものを返せというのはどういうことでしょうか??